2013年4月5日金曜日

【メモ】異次元

黒田総裁のデビュー戦となった2013年4月4日。
日銀金融政策決定会合で「量的・質的金融緩和」の導入が決定されたわけです。

「量的・質的金融緩和」の導入について(13時40分公表) [PDF 282KB]
量的・質的金融緩和の導入に伴う関連基本要領の制定および廃止等について [PDF 244KB]
当面の長期国債買入れの運営について [PDF 87KB]

従来の国債買入オペ(いわゆる輪番)と資産買入等の基金(通称、基金とかAPPとか呼ばれてたヤツ)との統合ならびに銀行券ルールって何それおいしいの?は既定路線として、さて何をどこまで出してきますかね、といった事前の予想を大きく上回る決定内容でした。

”日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率%の「物価安定の目標」を、年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を年間で倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。”んだそうです。ほぇぇ。

詳しい分析は我が師どらめもん先生に丸投げの記事を読んで頂くとしまして。

記念にBBの引け値をメモしておきましょう。

5y:0.130(-0.005) #109
10y:0.435(-0.115) #328
20y:1.135(-0.255) #143
30y:1.225(-0.295) #38
40y:1.280(-0.305) #5

( ゚∀゚)・∵. グハッ!!

”長期国債の買入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債としたうえで、買入れの平均残存期間を、現状の3年弱3 から国債発行残高の平均並みの7年程度4 に延長する。”
”国債種類・残存期間による区分別の買入金額 残存期間:10年超 月間:0.8兆円”

これわ強烈。阿鼻叫喚のブルフラット大会。買いあがれ!(`・ω・∩ショーリューケン!という風情であります。とか書いてる間に10yが0.3台を付けてみたり20yが1%割ってみたり屍累々の相場を展開してまして。


ところで、基本要領に気になる変更がありまして。冒頭ふたつめのリンク先、別紙5。

―――引用ココカラ―――

○ 4.を横線のとおり改める。

4.売買対象

次の(1)および(2)に掲げる国債とする。

(1)変動利付国債および物価連動国債以外の利付国債(発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く。)

(2)変動利付国債および物価連動国債(それぞれにつき、発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く。)

―――引用ココマデ―――








…えっ?

2013年2月26日火曜日

個人向け国債は国債の暴落への備えに有効か

Twitterでこんな記事を拾いまして。

国債の暴落に備える有効な商品は、なんと「国債(個人向け国債)」か?


今更ながら確認しますと、

 債券価格の下落=債券利回り上昇

であります。

文中、ネタになっている「個人向け国債 変動10年」の商品設計の詳細については財務省を当たっていただくとして、要するに

・単価が常に額面の100%である
・変動利率である ※1
・手数料が取られない

という点から、JGB暴落のヘッジに有効である、こりゃ皮肉ですなぁといった内容の記事ですね。確かに話としては通ります。

※1:10年国債の利回り(基準金利)をベースにして半年ごとに利率が改訂される仕組みです


じゃあ、JGBの暴落=JGB利回りの急騰ってなんで起きるんでしょう?


小難しいことを並べ立てることはナンボでも出来るんですけれども、ざっくり言ってしまうと「利払い・償還に不安がある」と市場が思ったら暴落すると私は思うのです。そのとき、「変動10年の個人向け国債がJGB暴落ヘッジに有効である」と言うのには少々抵抗感があります。デフォルトリスクに対するエクスポージャーは変わらんです。

まぁリスクテイクの程は投資家それぞれですから、個人の意見ですけれどもね。往年の死に体イタリア国債を拾って儲かったひともいますし。

固定利付きのJGBよりも金利上昇ヘッジ機能があることは認めますが、それを持って”国債暴落への備え”と言ってしまうのはちょっとどうかなぁと思った次第です。執筆者であるモーニングスター朝倉氏に喧嘩を売ろうなどというつもりは毛頭ないけれど、債券市場で飯を食う者として気になった点を書いてみました。


ついでに申し添えておくと、別に日銀は国債を買い支えてるわけではありません。また、現在は募集していない”復興応援国債"を含めれば、個人向け国債は4種類の商品設計が存在します。

2012年12月30日日曜日

チャートで振り返る2012年

ただただチャートを貼るのみ(´∀`)


まずは債券金利関係から。

 春と冬に軽くマーライオンをキメたJGB先物。
2年は心停止ですな。10年からゴリゴリ買われた様子が分かりますね。超長期(右軸)は色々と物申してる感。
主要どころの10年債イールド。終わってみれば、春先にロングしたヤツがエラかったと。
しかしまぁこう見ると、JGBってやっぱり安全資産()なんですかね。
欧州問題児軍団。ギリシャwwwというところではありますが、だいぶ落ち着きましたね。
何かと揺れたLIBOR。この話は来年も続くでしょうね。


続いて為替周り。
なんだかんだと確りじゃないですか。80割れでオージーを買い損なったのが不覚です。

チャートの都合、ZARは右軸、RUBは別建てで。
TRY買ってるの日本人でしょ。金利を押し下げたのも。来年はRUBもきっと(ry

続いて株とか。
これは年初を100としてどうなりましたかレース。日本株の追い上げがなかなかですがゴールドシップにはなれませんでした。
ファンド3種盛り合わせ〜Topixをそえて〜
JF凄いな。みんな大好きひふみ投信、派手さはないけど安定感。

その他、趣味の世界。
これは通貨のチャートと重ねたほうが面白かったかもしれませんね。

何とも微妙なAAPL。
今年もよう笑わせていただきました。来年も宜しくお願いいたします。ZNGAだけ敢えて面で描いてみる。

※個別銘柄のチョイスにはなーんの意味もございません。

欧州大コント大会やら各国で選挙やらクレクレ大騒ぎやら、盛りだくさんの2012年も終わりですね。引き続き芳しくない状況ではあるものの、色んな物事が転換点に来ているような気がしつつ、といった印象も。

クレクレは甘え、鰻は合法、よいお年をお迎えください。来年も宜しくお願い致します。

2012年10月3日水曜日

インフレ?デフレ?

「デフレ脱却にはまだまだ金融緩和が足りない。金融緩和を強化しろ。」
「それでは制御不能なインフレが…」
「そんなことを言ってるからデフレが終わらんのだ。金融緩和を(ry」

以下、無限ループ。

よく見る構図ではありますね。あ、どうもご無沙汰しとります。


消費者物価指数(全国 食料及びエネルギー除く総合 前年同月比%)のグラフ10年分。
どう見てもデフレです本当に(ry


冒頭の議論も気持ちはわからんではないです。



「金融緩和を強化」すれば「デフレは克服できる」んでしょうかね。
制御不能のハイパーインフレは歴史を紐解けばボロボロ見られるわけですけれども、もしかして今は「制御不能のデフレ」なのでは…



まぁ酒飲みの放言ですけれども。難しいことは優秀な人たちに聞いてくださいね。


さて


足元の金利は長らくゼロ近傍。資産買入等の基金という別腹まで用意して、日銀は既に日銀券発行残高を上回る国債を保有しています。他にもETFやらREITやら色んなもんを買っとるわけです。

#関連ニュース:日銀の国債保有残高が銀行券上回る、基金含め約81兆円に(Reuters)

金融政策ばっかり槍玉にあげても、麿のハの字眉毛の角度が急になるぐらいであまりアレなんじゃないでしょうかね。インフレにさえなれば全てハッピー、てわけではないでしょうし。物価だけあげるなら消費税でも一気にモリっと(ry

なんてことを書いてたら、JPM佐々木氏のこんなコラムを発見。

コラム:インフレ待望論の「危険な罠」=佐々木融氏(Reuters)

ステマではありません。


とまぁ今日はこんなところで。日銀の外債購入ネタでも一本書こうかと思ってはいますが、まだネタが練りきれてません。

クレクレは甘え。では、また。

2012年7月11日水曜日

LIBOR問題

ひさしぶりのエントリーは何やら大騒ぎになってそろそろ飽きられつつあるようなないような感じもしつつある、LIBORが操作されてた云々のお話。

既に英バークレイズのCEOが辞任、ドイツ銀行も当局の調査、UBSやCSに当局が接触、三菱UFJは在ロンドンのトレーダーが停職、などなどと報じられてますね。

バークレイズ1行で終わらない、LIBOR問題調査-FSA(Bloomberg)
てなもんで当局の鼻息も荒いですなぁ。

コトの発端はここいら界隈↓でしょうかね。
バークレイズ:ダイアモンド氏と英中銀の通話メモを公開(Bloomberg)
”それによると、市場担当ディレクター(当時)のタッカー氏はダイアモンド氏に、バークレイズの報告するロンドン銀行間取引金利(LIBOR)がなぜ最も高い水準の範囲に入っているのかを尋ねる電話を多数の政府高官から受けたと伝えた。”
”デルミシエ氏はLIBORを高水準で維持しないよう英中銀が指導したと受け止め、そのように金利報告担当者に指示したという。”

からの、このような報道↓も
英中銀副総裁:バークレイズへの指導で政府高官から圧力ない(Bloomberg)
”イングランド銀行(英中央銀行)のタッカー副総裁は、金融危機時にバークレイズなど英国の商業銀行に対しロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を故意に低めに報告することを指導するよう、どの閣僚や政府当局者からも圧力を受けていないと述べた。”

何やら既にめんどくさいかつ色々とふじこlp;@なニオイがしますね。


そもそもLIBORとはLondon InterBank Offered Rateの頭文字を取ったもんです。
つまりはロンドンの銀行間市場において貸し手が提示する金利。ちなみに無担保ベースです。日数計算は実日数/360で計算します。10通貨について算出されてます。
これ以上の誰得マニア情報はbbalibor.comをご覧いただくとして、要するに銀行さんが他の銀行さんに「お金貸してくれーぃ」とお願いしにいった時の資金調達金利であり、短期金利の指標的な存在として認識されています。

2番目に挙げたニュースで「バークレイズが提示するLIBORが高い」をことに指摘が入っていることはすなわち、「バークレイズがファンディングに苦しんでいるのではないか」と思われることに対するツッコミという意味合いを持ちます。時はリーマンショック直後。第2第3のリーマンはどこだ、と不安になり”疑心暗鬼”という言葉がマーケットを覆っていたときのことでした。




リーマンショックを挟んだ時期の6ヶ月LIBORの比較。バークレイズの提示レートのほうがBBA集計の平均よりちょっと高いのが見て取れます。




BBAレートを基準にしたバークレイズのレートのスプレッド。3回ほどハネ上がったあと休息にスプレッドが縮小していますが、この時期に、英中銀市場担当ディレクターのタッカー氏(現副総裁)がバークレイズに直撃お電話をしたとかしないとか。


ところで、こういったニュース↓もあるわけでして
英中銀副総裁、バークレイズ債のプライシング高いと指摘=メール(Reuters)
”タッカー副総裁は08年10月26日に、バークレイズの政府保証債が英国債利回りに焼く140ベーシスポイント(bp)上乗せした水準で発行されたことに言及する題名でダイアモンド氏に電子メールを送り、メールの本文で「それは高い」と指摘した。”


「おたくんち、LIBOR高くね?スプレッド厚くね?金融システム不安煽らんでくれよチミぃ」
「やっべー怒られちったよー。とりあえずLIBOR低くすんべー」


ざっくり言ってしまえばこんなやりとりがあったんだかなかったんだかということですね。
例えば銀行の信用リスクをはかるのに同期間の短期国債とLIBORのスプレッド(TEDスプレッド)を見たりしますが、その為のLIBORが操作されてあるべきリスクが織り込まれていなかったとしたら。。。と考えれば確かに不正操作ではあるわけですが、ここに中銀やら政府やらが登場してくるから非常に面倒。しかも世界中の金利の指標たるLIBORがその対象でありまして、「じゃ、別のもんに替えるわ」なんつぅわけにはいかん(この辺は今後、訴訟等々から訴求して再計算して云々なんてことになるんでしょうかね…)わけでさぁ大変。

しかしそもそも金利なんていうものは、相手によってもタームによってもサイズによってもその他諸々の環境によって千差万別なものでして、またときに「ムラ社会」などども言われるように、ある意味では阿吽の呼吸で成立してるマーケットでもありまして。
金利村に何年も住んでればその辺の感覚勘所はなんとなくわかるけど、外から見たらアヤシゲなものなのでしょうねぇ。

落ち着きどころはどこになることやら。。。


最後に、合わせて読みたい的にのご紹介
次の舞台:Tori Box http://ttori.exblog.jp/17733670/

2012年4月1日日曜日

【書評】【ネタバレ】ゼロクーポンを買い戻せ

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2012年3月10日土曜日

不胎化QEってなんですか…

3/8の話ですが、Bloombergにこんな記事がでていましてですね…

FRBが「不胎化」QE検討、新たな措置必要な場合-WSJ

いやいやちょっと待ちたまえよ。不胎化したらQEじゃないからw

ネタ元はWSJのようなので探してみたところ

'Sterilized' Bond Buying an Option in Fed Arsenal

なる記事がありました。

ふむ。債券買入の一方で、その資金はリバースレポで吸収することで不胎化するとな。カネをドバドバ出しっパにしてインフレになったらいかんという理屈のようですね。
あるいは、過剰流動性を供給したことにより中南米にホットマネー流入、その後の崩壊を招いたという意識もありやなしや。

ご存知の通り、現在FEDは「オペレーション・ツイスト」を行っているわけです。短いゾーンを売り長いゾーンを買うという政策。FEDのバランスシートを拡大することなく長い金利を潰すことで直接/間接に住宅市場を支援しようというオペレーションかと思います。売られた短いゾーンの金利が跳ねないように、FEDは「2013年まで」「2014年まで」と期間を切って時間軸を強化してきたわけです。まぁこれも時間軸「めいたもの」ではあるわけですが。

ここでReutersの記事をひとつ

米FRB、追加量的緩和実施の場合は不胎化を検討=報道

”同紙によると、FRBは国債買い入れを通して市場に投入した資金を、短期的に低金利で市場から借り入れる可能性がある。これにより資金が市場から引き揚げられ、買い入れを不胎化することができる。”

WSJ記事にもある表現の訳ですな。要するにボンドを買う一方で資金を市場から借り入れる(すなわちリバースレポを行う)ことで市中のマネーの量を増やさないということ。

ふむ、マネーの総量を増やす(printing money)によるインフレを懸念してのアイディアのようですね。金融緩和とコモディティ相場の上昇はある種、セットのようになりつつありますし。資産効果でも何でもいいから経済が回復してくれんことには、物価上昇だけを招いてスタグフレーション、なんてことにもなりかねないわけだが。

ツイストオペの買いについては債券発行は常にあるわけですし住宅市場支援という意味ではMBSを買いまくればまぁいいんですが、売りについてはFEDが無限に短期債を持っているわけでもないのでいずれ底を尽きます。そこで考えたのが、この不胎化ということなんでしょう。

しかし、マネーマーケットに巨大な資金の取り手が現れるということは少なからぬインパクトをもたらすものと思います。日本国内で円金利に接している人間は2010年を思い出してしまうわけです。
「市場機能論」という言葉がありました。足元金利つまりマネーマーケットの機能は殺したくないという話。この辺のいきさつはゼロ金利当時の解説が必要になるんですが都合により割愛。2010年に何があったかといえば、市場機能論から足元金利にそよ風が吹き、債券相場がちょいとした急落を見せたわけです。ある方は「マーライオン」と評し、ある方は「もらいゲロ」と評しました。

先程のReutersの記事にもあるように、”2年物、3年物金利が上昇する恐れがある”と思います。足元が崩れればあとはもらいゲロが待っていますよ。


目先すぐにこの不胎化QEだかなんだかってオペレーションを導入する可能性はまだ低いかもしれませんが、リアクションチェックというか、地ならしなんでしょうね。
足元の資金需給はマーケットのスタート地点。どうハンドリングしていくのか、逆さ絵おじさんの手腕にを重大な関心をもって注視していくこととしましょうか。クレクレは当面収まるところを知らんのでしょうからねぇ。

株価やコモが気付けばエラいしっかりしてる一方でUST10yは不気味なほど2%界隈でうろちょろしてるのが足元のマーケット。2010年の日本程度のゲロゲロで済めばいいけども、VaRショック並みにゲロってしまう可能性もなくはないのかな、なんて思うんですけどね…。


本来的に、景気回復を金融政策を真に信頼するならば長い金利は上昇して何ら問題ない。足元金利を押さえつける一方でスティープニングしていくのが正しい姿ではあるんです。でも金融政策の限界というか、債券需給に手を突っ込んでフラットさせていく政策が続いています。
金融政策は長い金利をいじれない、という定説は崩れたのか、無視されてるのか。それは出口でわかることなのかなぁ。