2011年12月31日土曜日

2011年を振り返る


まずは2011年のJGB先物のチャート(出所:http://www.opticast.co.jp/)。まぁ確りでしたね、といったところ。
今年の四本値は

O:140.70
H:143.14
L:138.32
C:142.41 (※手元のメモベースw

んでは、ざっくり振り返り。

前年のマーライオン相場のオーバーシュートからやや切り返していたものの、景気回復期待が強く、株価も堅調に推移、年初の債券相場は上値の重い展開でスタートした。2月に138.32まで売り込まれるが、ここが今年のボトム。現物10年債が1.35レベルを付けたところで底打ち。
3月11日には東日本大震災が発生。JGB先物は上下に長いヒゲを作る乱高下を演じる。当時のことはこの辺りで書いている。振り返れば、あのときバンバントレードできなかったのが悔しいけど、モニターがぶっ倒れてきたりしてそれどころではなかったw

保険屋さんのリパトリ話で円高進行、株安債券高の展開を見せるものの、震災からの復興財源として国債増発の観測が高まったり、キャッシュ確保らしき債券売りも出て、春にかけては再度重たい相場展開を見せる。
原発事故絡みで東電が逝ってしまい、一般債のスプレッドも一時居場所がわからなくなりワイド化したが、公共債周りでは東京都のT+15ぐらい発行でいったん切り返した記憶がある。
東京電力に係るエダノ発言には多くの市場関係者が怒りを爆発させたものでしたねぇ。。

春に2月安値を試しにいった債券相場は2月に買い逃した投資家の買いも入り底を打つ。4月底打ちで「去年と同じ展開かなぁ」という声が聞こえてきていたし、その後の展開はまさにそういうもので、秋まで続く上げ相場のスタートになった。

夏場にかけてギリシアに端を発した債務問題はイタリアやスペインといった周縁国に波及。米国では債務上限問題がクローズアップされデフォルト云々の話まで取りざたされる。8月にはS&Pが米国債の格下げ(AAA→AA+)を行ったが、株安からの債券高という面白展開。経済指標は悪化を確認するターンとなり、景気に対する楽観論も後退していった。

6月に予定通りQE2を終了したFRBは新たな金融政策を模索、オペレーションツイストなる奇策に打って出る。中銀自らがフラットニングポジションを組もうという話だから、当然、債券市場は先んじてブルフラットニングしていた。9月にツイストが発表されるとUST10yは一時1.7%レベルまで買い進まれたが、さすがにその後は2%絡みの展開。

海外の流れを受けて半年近い上昇を続けてきたJGBは、前年のトラウマが甦り先物143円/10y1%割れが上値を押さえる。一方で売り材料も乏しく、結果的に秋頃はレンジワークを見せる。国内要因では民主党代表選挙が行われ、野田新首相が誕生した。

海外では銀行のファンディング懸念が浮上。BNPパリバのドル資金調達難が報じられたり(その後、否定)、デクシアが解体され、MFグローバルが破綻。自己資本強化の為のデレバレッジは今後も明るくない話題としてテーマになるのだろう。気付けばUSD3mLIBORは7月から上昇傾向が続いていた。(出所:http://www.bloomberg.com/


ギリシアではパパンドレウ首相が包括戦略の受け入れを国民投票にかけると発表、お笑い国家の本領を発揮する。イタリア国債利回りが7%台に到達、フランス国債も売られ独仏スプレッドが過去最大をマークするとともに、銀行株が次第に息をしなくなっていく。リスクオフ極まり、JGBもレンジを上抜けるかに見えたがそう単純なものではなかった。

11月にJGB先物の取引システムがTdex+に変更されたこと、ドイツ国債入札でまさかの札割れ(利回りが低過ぎたから引いただけでしょ、と説明された)を契機にJGB先物は1円を超える急落を見る。長い上昇相場とその後続いたレンジワークでポジションがややロングに偏っていたのか、その下げ足は非常に速かった。141円台央/1.10%目前まで売り込まれたところで現物買いが沸いてでてきたことで、前年のようなマーライオン相場になることはなかった。去年のトラウマが反省として市場参加者の頭に焼き付いているのだろう。

年末、R&Iが国内格付機関として初めてJGBの格下げ(AAA→AA+)を行うが、「で?」といったところ。


ボンド周りの出来事をざっくり振り返るとこんな感じでしょうか。

欧債務問題の深刻化と全世界的な景気の鈍化、また日本の震災をはじめ多くの自然災害に見舞われた一年。


日銀は度重なる金融緩和政策を実施して、資産買取基金は今後もホイホイ拡大していきそうな感じ。実際のところ、これ以上基金オペ回すのは結構しんどいと思うんですけどね。ETF買入とかに振り向ける方向はどうかっつーと、あれって評判よろしくないみたいだし、「評価損ナンボ」みたいなニュースも打たれちゃうしねぇ。
為替介入も何度かありましたね。「納得いくまで」で79.19に貼付けたのかどうか、中の人に聞いてみたいものですw
政治に目を向ければ、交付国債という新ネタを見つけてしまったどうもアレな感じがしてます。代表選のとき、野田さんは財政再建論者ってことでJGBも買いで反応したけど、少しずつでも確実に「その時」が近づいてる感あるし、今年はそれが少し加速したんじゃないのかなぁという気もします。外から見てたらJGB売りで攻めたくなる気持ちはわからんではない。


なわけで、盛りだくさんな2011年お疲れ様でした。来年も適当に駄文を垂れ流していこうかと思っとります。
クレクレは甘え。鰻は合法。よいお年をお迎えください。

2011年10月22日土曜日

【ネタ】ユーロの取り扱い説明書

EUR FX trading guide.......

1. Put your hand on a EBS key pad
2. Open your Reuters news
3. When you see red color headlines contains; Germany, IMF
4. Press Sell button
5. DO NOT READ THE CONTENTS
6. When you see a red color headlines contains; ECB, France
7. Press Buy button
8. NEVER READ THE CONTENTS
9. Make sure your end of day risk is flat

Twitterでまわってきた小ネタ。
@dandykawase さんという方のtweetでした。


爆笑www

2011年10月10日月曜日

債券ブローカーと呼ばれる人たち

鷹鳩さんが為替のブローカーに関する記事を書いていたので、債券市場のブローカーのことでも書いてみようかと。どうでもいいけど、ブローカーって何やら怪しげな響きですな。

ブローカーってのはいわゆる仲介業者のことでして、そもそもは証券会社なんかが「ブローカー」です。投資家と市場との間に入って仲介しとるわけですから。運用業界の人達、特に株のFMさんやトレーダーさんなんかと話してると、この意味で「ブローカー」という言葉が使われるように思います。

債券市場におけるブローカーってのは、ブローカーのブローカーです。わかりにくい言い方をしました。銀行や証券会社(ひっくるめて業者=そもそも的な意味でのブローカー)の売り買いを仲介して成立させる人たち、これが債券市場の「ブローカー」です。
債券市場には取引所がないですから、こういった人たちの存在が不可欠なのですよ。業者同士で売り買いすることももちろんあるんですが、いちいちお友達の業者さんに電話して「これいくらで売る?買う?」なんてやってちゃ日が暮れますのでね。

JGBであれば、最大手の日本相互証券と、先に統合を発表したセントラル短資証券とICAP東短証券てのがあります。日本相互証券が通称BBと呼ばれるのは「ブローカーズブローカー」の頭文字をとったもんです。たぶん。
この3社がそれぞれに取引システム(要するに「板」)を提供していて、債券ディーラーはこの板に出ている気配を見ながら売買を行います。先物も含めれば取引用だけで4台もモニター見てなきゃいけないんですね。あぁ大変w

債券ディーラーの席にはこれらの板以外にも、マイクやスピーカーが置いてあって、ブローカーさんが板に出てる気配や板に出てない(オフの)気配や、どの銘柄がいくら出合ったか、なんかをずーーーーーっと実況中継してくれる声が流れてきます。ボイスってやつです。
マイクを使って、いちいち電話鳴らさずに双方向の会話をすることも可能。自分が売り注文を板に出してるときなんかに、「今オフで買いにきてます!」って言われたりとか。このへんは為替のブローカーと似てるかな。

債券市場がいかに人力で動いてるか、わかっていただけたでしょうか?w 最近じゃ先物の動きにあわせて現物のオーダー出すアルゴなんかもあるとは聞きますが…。

同じ銘柄でもこっちのブローカーではこの値段だけどこっちのブローカーではこんな値段付いてるよ、なんてことも時々起こるんですが、まぁそこで裁定とりにいくのってほぼ不可能。そんなミスプライス付いてるのって、大概はその一発しか取引が成立しないような流動性ない銘柄ですからねー。

ブローカー(特にBB)の板とボイス、場合によっちゃメールなんかも使って、非常にグレーな状態で取引するのが債券ディーラーというお仕事。店頭で飛んできた注文は時として、買い板ぶったたくような値段で売ったり、売り板とるような値段で買ったりしなきゃいけない場合もあります。えぇ、社畜ですから…。

2011年9月5日月曜日

カーブは手前から

「オペレーション・ツイスト」なる言葉が市場を賑わしていますね。FRBの次なる一手はこれじゃないかと注目されています。

じゃぁ、何がツイストするの?

って話ですが、答えを言ってしまうとイールドカーブです。イールドカーブとは何かってのはggrksWikipedia先生がこのように仰っています。よーするに債券の利回りを年限ごとにプロットしたグラフのことです。利回り曲線と日本語訳されますね。債券市場の人間は往々にして単に「カーブ」と称します。

イールドカーブは通常(?)右肩上がりの曲線を描きます。日本も米国もドイツも右肩上がりのカーブです。ギリシアとかはまぁアレなんでひとまず無視してください。
@mazyoshiさんの#investudyに米国債のカーブが載ってたので引用がてらリンクしておきます。2番目の図、ご覧の通り右肩上がりですね。

さて

イールドカーブの傾斜がきつくなることをスティープニング、カーブが寝ることをフラットニングといいます。イールドカーブがスティープするということは、残存期間が長い債券が売られて利回りが上昇することで発生します。。フラットニングはその逆。

オペレーション・ツイストが実行された場合に目指すのは、米国債のイールドカーブをツイストフラットさせることです。オペレーション・ツイストの解説として「残存期間の短い債券を売却し、より長い債券を購入する」などという表現がされていますが、これがまさしくツイストフラットニングのアクション。
短い債券を売ることで利回りが上昇し、一方で長い債券を買うことで利回りが低下する。イールドカーブの動きを想像してみると、捻れるようにしてカーブがフラットニングしています。つまりツイストフラット。

FRBは既に金融緩和政策として債券の買入を行っており、そのB/S上に多額の債券を保有しています。オペレーション・ツイストを行うのであれば、FRBの保有債券のうち残存期間の短いものを売却し、より長い債券を市場から買い入れるというアクションにでます。
この世界には「中央銀行には逆らうな」という言葉がありまして、かつ、「次なる一手」を織り込むようにして、米国債のカーブは順調にフラットニングしてきています。

債券ディーラーがここで何をしているかといえば、オペレーション・ツイストを織り込む過程で更にカーブがフラットニングする方向に賭けて中短期債ショート長期債ロングのポジションを作る、あるいは、既に織り込んだものとして逆張りで中短期債ロング長期債ショートのポジションを作る、なんてことをやってるわけです。前者をフラットナー(あるいはフラットニングポジション)、後者をスティープナー(あるいはスティープニングポジション)とか言います。こういったイールドカーブの変動に賭けてポジションをとることをカーブプレイなんて言ったりします。

米国債利回りは無料のBloombegアプリ等で見れますが、注意深く見ていますと、10年債や30年債の利回りは低下(債券価格は上昇)しているのに2年債利回りは小幅に上昇(債券価格は下落)していることが最近ではよくあります。まさにツイストフラット。フラットナー優勢ですね。

長いゾーンの金利低下を促すことによる景気への波及効果のトランスミッションメカニズムについては、祇園さんのブログを参照されたし。とまぁ丸投げもアレですので一部引用しますと

”モーゲージ金利を低く抑えることで、新規購入の望みは薄いものの、リファイナンスは促進される。モーゲージ金利負担が軽減されれば、消費にもいくらかの効果が出てくる可能性もある”

という話でありますよ。

さてさて

現状でもFRBは緩和的な金融政策を堅持しているわけです。FRBが短い債券の売却に走るとはいえ、中短期ゾーンの需給を破壊してマーライオンを引き起こすことなど狙ってはいないでしょう。ツイストフラットを目指す、とは言いましたが、そのツイストアクションはおそらく、中短期ゾーンの利回り上昇幅よりも大きな長期ゾーンの利回り低下を導くものと想像します。
多少のぶれを除外すると、ただのブルフラットニングじゃねぇかというツッコミが飛んできそうですね。ブルフラットってのは債券が上昇するなかで長いゾーンの金利が低下するカーブアクションのこと。

ではなぜ、FRBが「短い債券を売って」長い債券を買うという面倒なことをするのではないかと想像されているのでしょう?

勘のいい方はそろそろ気付いてると思いますが、買いの一方で売りを行うということは、ポートフォリオ全体の規模は維持されることになります。ポートの中身だけが入れ替わり、ポート全体のデュレーションが長期化することになります。FRBのB/Sのサイズは維持されることになりますわね。

これって、FRBのB/S拡大は更なる次の一手として温存してるのかなぁ。なーんて邪推をしてみるテスト。チンピラ債券ディーラーの戯言ですのであまり真に受けないように。

しかしまぁ、カーブを手前から潰していくなんて動きをみると、どっかの国を想起せざるを得ませんなぁ。「長めの金利の低下を促す」なんて某日系の中央銀行みたいじゃないかw

2011年7月31日日曜日

This Time is Different...?

前に書いた怒りの東電ネタから気付けば2ヶ月以上が経ってしまいました。そろそろ忘れられた頃かと思いますので久々に書いてみんとす。タイトルは最近話題の一冊「国家は破綻する」の原題からもじって付けてみました。

さて、ねじれ国会の様相を呈する中、アメリカの連邦債務上限引上げ問題が難航していますね。ホワイトハウスと共和党が前提合意に達したとの報道もありますが、最終的にどういった形で着地するのかなお不透明な状況。足元では米国債のデフォルトや格下げが取りざたされるようになってきたわけです。
こういった状況を受けてドルや株が売られる一方、本丸である米国債は売り込まれるどころか底堅く、何ならリスクオフで買われるというオサレにも程がある展開となっています。格下げだデフォルトだなんて米国債市場の材料になってないよね、とお友達のディーラーさんとこないだも話してました。

そもそも国家の債務がここまで注目されるようになったきっかけはギリシャでした。前政権の”隠れた借金”が暴かれたことで信用力が失墜、ギリシャ国債は貸金業法もビックリな利回りを示すまで売りたたかれ、既に投資不適格どころではないところまで格付けが引き下げられることとなりました。言ってみりゃデフォルト待ち状態。(この辺の話についてはGLOBALMACROneoさんに良記事がありますのでフィードリーダーに登録推奨という名の丸投げ)
抜本的解決策などまるで見えないなか、事態は次第にポルトガル、スペイン、イタリアといった国々へと波及し始めています。あっちの国に追加支援が決まったかと思えばこっちの国の国債がゲロゲロマーライオン。その度にユーロは買われては売られ、その間にスイスフランが最高値をマークしたりしてるわけですね。最近では欧州ネームの銀行等との取引が制限されるケースもあるようです。

では債務残高が法的に決めた上限に達し新たな国債の発行ができないまま利払いや償還を迎えようとしている米国債はどうなるのか。ギリシャのような道を辿るのか。

結論は「No」でしょう。

というのは、米国債に死んでもらっては困る人があまりにも多いから。米国債市場は非常に巨大であり、また世界中から参加者が集まっています。ギリシャなんぞ比べ物になりません。言葉は悪いですが、ギリシャ国債なんぞ投げたら終い、あとは勝手にしてくださいの世界です。
が、米国債であればそうはいきません。世界中が米国債を投げ売ったとしてもそのマネーを受け止める市場なんぞ存在せんのです。世界に誇る公的債務残高をもつJGB(笑)もありますが、あまりの低金利っぷりに選択肢から外れるのが現状。
また米国の歳入が予想を上振れ、とりあえず目先の資金繰りには問題がないと見る向きも少なくなく、また米国債の利払い・償還を優先することでデフォルトを回避すると見る向きもあるようです。

要するに、本当の意味でアメリカがデフォルトに陥るという事態は誰も実現したくないが故に実現しないのではないか、という結論。万が一、目先の利払いや償還が実行されず理屈の上では債務不履行になり、格付けが引き下げられたとしても、「だから何?」で終わるんではないかと思うのですが楽観的すぎるでしょうか?
また債務上限に達したから引き上げ達したから引き上げ、ではどーしょーもないので、裏側では緊縮財政が議論されています。これは景気下押し材料になり債券市場をフォローするものになりますね。債券需給という面からも。となれば金融政策は緩和的なものをキープせざるを得ないでしょうねぇ。。。と漠然と考えてたら、著名エコノミスト氏も同様のビューでちょっと安心したのはここだけの話ですw

ちなみに、この問題に関して、現地アメリカでマーケットを見てる方とも少しやりとりしたのですが、AAAであることとそこから落ちることではやはり違いは大きい、金利上昇圧力になるのではないか、とご教示いただきました。
でもドルや株が売られる中で米国債が買われているという市場のアクションがあるわけで、それが全てだと思うんだけどなぁ…というのは円債市場の住人の思い込みなんでしょうかね?

何にしろ、この債務上限引上げ問題がどういった着地を見いだすのか、そのとき為替は、株は、債券はどう動くのか、何パターンも頭の体操はしてみてはいますが、どうなるのかは開けてみなきゃぁわからねぇというのが正直なところです。


とまぁ思いつくまま適当に書いてみましたが、相変わらずの駄文垂れ流しっぷりに自分でも呆れてしまいますね。
足元の米国債市場を眺めて、債券市場の末席を汚す人間としては「まぁそうでしょうねぇ」という感覚だったのですが、別の角度から市場を見てる方から「(売られないのが)不思議だ」という意見をいただいたので、こういったエントリを書いてみた次第です。

じゃあGDP比2倍近い債務がある日本はどうなのかって?そりゃこんなガラパゴス極まりないマーケうわなにをするやめろアッー!

2011年4月5日火曜日

債券レポ-SC編-

ふたつのレポ、GC編に続いてSC編です。レポの話としてはこちらが本丸かも。
SCとは「Special Collateral」の頭文字をとったもの。前回の冒頭で触れたようにモノありきのレポ取引です。

結論から言えば「空売りする為の現物債を借りる」取引です。株式同様、債券を空売りする際には誰かから売る為のモノを借りてこなければいけません。モノを借りる為にレポ取引を利用するわけですが、ここでは貸借取引の対象となる債券の銘柄が特定されています(#313を50億借りたい、とか)。よってSpecial Collateral。

ショートする人は必ずモノを借りるか買い戻しで踏まなきゃいけないわけですから、SCにおける仕上がりのレポレートはGCに比べて低くなります。とだけ書いてもワカランチ会長だと思いますので説明を。

『レポレート=現金担保に対する付利金利−債券の貸借料』であるいう話は前回もしました。より正確に言えば、レポレートは現金担保に対する金利と債券の貸借料のバランスを反映して決まるわけです。
GCは資金の運用・調達マーケットですから、品貸しに大きな意味はありません。しかし、SCはモノの貸し借りのマーケットですから、付利金利に対する貸借料のウェイトがGCに比べて高くなります。「銘柄何でもヨシ」ではなく「その銘柄貸してくれ!」なわけですから当然ですね。

需給が逼迫した銘柄の場合、レポレートがマイナス金利になる場合もあります。レポ取引では、債券の借り手からすれば現金担保を差し出して付利金利を受け取るとともに債券を借り入れて貸借料を支払うわけです。需給が逼迫した銘柄の貸借料は高騰します。付利金利<貸借料となるまでに需給が逼迫すれば、その銘柄のSCレポレートは結果としてマイナスレートになるわけです。ギョーカイではこの状態を「ネガティブ」といいます。
大口の買いが入ったとか、貸借料高騰狙いで誰かがガメたとか、入札前にリオープンを見越して売りまくってたら相場が動いてリオープンしなかったとか、そんなときに起こる現象です。

以前にも入札に絡めて書いたことがありますが、入札前はプライマリーディーラーを始めとする業者は入札対象近辺の銘柄に売りを入れることが多くあります。売るからにはSCで借りなければいけません。が、多くのディーラーが借りにくるわけですから、入札対象近辺の銘柄の貸借料が高くなりがちです。
以前は、2年債以外の国債は毎月20日が発行日とされていました。10年債は毎月初旬に入札が行われるわけですが、それに前後して空売りされた既発債や入札時にショートのまま発行までに買い戻しが済んでいない新発債については、貸借料が上記の理屈で高騰しがちでした。入札日から発行日までの相場変動があると思ったように買い戻せなかったりするわけです。
これを防止するため、国債の償還がある3、6、9、12月を除いては、国債入札日の3日後(T+3)の発行に変更されました。上記リスクを減らそうという意図ですね。3、6、9、12月は20日の発行日を維持したのは償還資金流入による円滑な国債発行消化を重視したためと推察する次第。

毎度、取り留めのない文章ですが、SCってのはこんな感じです。大人の事情で書けないこと山盛りのマーケットですので、これ以上の話はオフの場でw

2011年4月2日土曜日

債券レポ-GC編-

債券レポはモノとカネをやり取りする取引であるということは前回のエントリに書いた通り。そして債券レポはSCとGCというふたつの形式に大別されます。ざっくり言うと、前者はモノありき、後者はカネありきの取引です。

今回はGCについて。
GCとは「General Collateral」の略でして、基本的には資金の調達・運用のマーケット、もっと言えば保有在庫のファンディングマーケットだと理解しています。

証券会社を例に考えてみますと、彼らは多くの現物債を在庫として保有しています。投資家さんが買いにくるであろう玉を在庫に仕込んでおいたり、売り注文を受けて取ったけど売却してなかったり。その為の資金は100%自己資金ってわけじゃあない。銀行からの借入金だったりレポやコールでなんかで資金調達してくる必要があるわけです。超大雑把にいえば信用取引みたいな構図。
てことで、現金担保付債券貸借取引という仕組みを利用して、逆に、債券を担保として使って資金を調達しようとうニーズが出てくるわけでして、これがGC取引。

担保玉は何でもいい、というのが最大の特徴です。実際は国債(JGBおよびTDB)しか使えないんだけど、やりとりする現金と債券が同額であれば銘柄は問わないということです。故にGeneral Collateral。

取引形態はT+2スタートのオーバーナイトが中心ではないかと思いますが何のこっちゃ(°Д°)ハァ?だと思いますのでご説明。

債券売買においては通常、約定日の3日後に受渡決済が行われます。そしてその約定日の翌日に保有債券の残高と資金過不足を確認して、必要に応じてGCで資金調達しにいくわけです。売買約定日の3日後=売買約定日の翌日の2日後で、売買約定日の翌日=GC約定日、という理屈。

つまりですな

来週で言えば、4/4約定の売買は4/7に受渡決済。で、4/5になって資金過不足を見たところどうも4/7時点で資金が足りない。んじゃぁ4/5約定のGCで在庫の債券使って4/7の資金を調達しましょうね、ということになる。
GCレポの約定日(Trade date = T)の2日後(T+2)にスタート(レポ取引の受渡決済)するGCが中心になるのはこういう背景なわけです。日銀の資金供給オペもT+2スタートが多いのは同じ理屈だろうねぇと推測する次第。
で、保有債券なんて次の日には売っちゃうかもしれないしまた増えちゃうかもしれないから、GCは翌日物の取引がほとんど。さきほど「T+2スタートのオーバーナイトが中心」と書いたのはそういうわけです。

ちなみにギョーカイではT+1スタート翌日エンドを「トムネ」、T+2スタート翌日エンドを「スポネ」と呼ぶ。また、月末スタート翌日エンドを「末初(まっしょ)」と呼ぶ。末初が読めればもう短期市場は制したようなものです(違

レポでは仕上がりのレポレートで気配出して取引するわけですが、GCでは品貸しに大した意味がないので貸借料は0.01として、現金に対する付利金利をレポレート+0.01で計算するのが慣行。レポレート0.11だったら付利0.12の貸借料0.01、という具合。債券を時価で評価して経過利息を含めて計算した受渡金額が現金担保の額。そこに金利かけて貸借日数分の利息だして、付利と貸借料の差引の金額を現金担保に足し込んで貸借取引を行います。

金利形成としては、通常は無担保コールO/Nの誘導目標からロンバート貸出の間で、その時々のマーケット全体の資金需要で動く。現状では誘導目標は0〜0.1のレンジだけど、当預の超過準備に0.1の付利があるから基本的には0.1が下限。資金の出し手からしたら、日銀に置いとけば0.1の金利もらえるんだから、取引やら事務やらコストかけてカウンターパーティーリスクとってまで0.1以下のGCで運用するニーズないじゃんという話である。

ただし、資金の出し手の中には超過準備付利をもらえない人たちもいるわけでして、昨今の大量資金供給当預40兆円攻撃(ドラめもんさん風)を受けて、そういう皆様が余資運用のために半ば涙目になりながら足元で0.08とかでGCに資金出してきてるわけですが。資金調達サイドとしては助かるは助かるんだけど、彼らのような出し手までやる気失ってカネ取れなくなると一発サヨナラ資金ショートに陥るので何ともアレではあるのですよねぇ。
ちなみにリーマンショックの時はカウンターパーティーリスクが意識されてというか要するに疑心暗鬼が蔓延して誰も資金を出さなくなって、GCのレベルがロンバート貸出の遥か上空まですっ飛んでったわけですが。
金利って、お金の値段なんですなぁ。

GCってこんな感じです。ニュースなんかで「日銀の潤沢な資金供給を受けてレポレートが低下」とか書かれるのはこのGCのレートのことだと思ってよいでしょう。レベルの指標としては東京レポレートというのが日々公表されてますのでマニアックな方はご覧ください。



長ぇなw

2011年3月27日日曜日

債券レポ-導入編-

Twitterでやたら期待されたレポの話を書いてみましょうか。
ここでいうレポとは債券貸借取引のこと。Repurchaseが語源とされていますがなぜか「レポ」と呼ばれてます。「リパ」じゃん、と言われてもおじさん困っちゃうので突っ込まないように。てゆーか売買じゃないしね。貸借だしね。

債券屋のバイブル「債券の基礎知識」によりますと、日本における債券貸借取引は1989年5月から無担レポを中心にスタートしたそうです。つまり担保を取らずに債券を貸し借りする取引ですね。しかしながら無担保取引であることのリスクが指摘されることとなり、現在では有担保の取引が中心です。特に現金担保付債券貸借取引。代用有価証券も担保になるはずだけど個人的にやったことがないのでとりあえず無視ですすいません。

ちなみに無担保のリスクが指摘されたのは、最近また名前をよく見かけるようになったベアリングスの破綻と思われ。彼らが無担保で借りた国債をまた別の担保に差し入れたまま逝っちまったもんだからエラい騒ぎだったそうです。考えたくもないですなぁ…。

ということで、ここでは基本的に有担レポ、特に現金担保付債券貸借取引について書きます。

現金担保付債券貸借取引とはその名の通り、現金を担保として債券を貸し借りする取引です。
債券の借り手は担保として現金を差し出して債券を借り入れるとともに債券の貸借料(レポ料)を払い、債券の貸し手=現金担保の取り手は貸借料を受け取りつつ受け入れた現金に対する金利(付利金利)を払います。付利金利と貸借料の差し引きの金利をレポレートと言いまして、これを気配として提示することにより取引を行うわけです。
このことからもわかるように、レポ取引は債券の貸借という側面と、資金の運用・調達という側面を持ち合わせています。ここ重要。

なお、「A Day In The Life」さんというブログにわかりやすい図入りのエントリがあったのでリンクしときます。あとはここを読んでねヨロシクと言いたいぐらいわかりやいエントリです。また、セントラル短資さんのサイトの中の債券レポ市場なるページもまとまっていてわかりやすいですね。

尚、現金と現物をやりとりする取引として現先取引というものがあります。空売りするのに現物を調達する必要があることは以前にも書きましたが、レポ市場が整備される前は買現先でモノを調達していたのかな。

そういったマーケットがあったのになぜ債券貸借取引が発達する必要があったのか、という疑問がでてくるわけですが、そこには今は亡き有価証券取引税の存在があるわけです。その昔は有価証券の売買そのものに税金がかかってたのです。利益が出たかどうかはにかかわらず取引自体が課税対象。現先売買ももちろん課税対象。
そこで貸借取引ですよ。これは消費貸借契約ですから、有価証券取引税の対象にはならないという判断だったのでしょうね。有価証券取引税は1999年に廃止されましたが、そうして発展してきたのが日本の債券レポ市場なのです。

うん、長くなりました。


本当はGCマーケットについてまでを書こうと思ってたのですが、あまりに長くなりそうなので今回は”導入編”でやめておきます。とりあえず、レポとは「債券と現金を交換する取引である」ことと「貸借料および付利金利の授受がある」ことだけご認識ください。
次回以降は2回に分けて、GCとSCについて書こうと思います。うん、思います。たぶんね。

2011年3月13日日曜日

地震とマーケット備忘録

2011/3/11、東北を震源とする大地震をきっかけに北関東や新潟でも地震が断続的に発生。津波も発生して被害はどれほどのものになるのか見当もつかない現状です。
当日は一度は徒歩帰宅を考えましたが、結局は当社からもほど近い知人のオフィスの会議室で飲み仲間とともに夜を明かし、交通の回復を待って翌日に帰宅しました。

さて、地震の第一波を受けたのは後場の商いが引ける手前でした。すぐにやむだろうと思っていた揺れは次第にその大きさを増し、窓とブラインドがぶつかってガタガタ鳴るわ、モニターは倒れてくるわ、ちょっとした騒ぎになりました。

常備してあるヘルメットを初めてかぶり、デスクにしがみつきながらも板を見ていると、JGB現物が買われる約定音が日本相互証券(BB)の端末からキンコンキンコン鳴り響き、先物には買い物が殺到する状況でした。

その状況をとらえた5分足チャートがこちら↓(出典: http://systemtrade-life.com/wcharts/ )


限月交代直後、週末を控えた15時引けを前に、138.80台で死んだように横ばいを続けていたJGB先物が急騰した様子がわかります。

地震発生からしばらくして、BBを始めとするブローカー各社は現物債の売買を停止したましたが、東証は先物の売買を止めませんでした(この辺りの判断はTwitterでも話題になりましたが難しいところですね…)。ディーラーが現物ショートのヘッジで先物を買ったのかもしれません。しかし、それだけではあんな急速に1円以上吹っ飛ばすとは思えない。もちろん私個人の感覚ですが。

思うに、株等とのインターマーケットトレードを含むJGB先物ショートのストップロスアルゴの買いが入ったのではないかと。大証クローズ後にはSGX225が10000割りにいく状況でしたし。まぁ推測の域は出ませんが。

ともあれ先物6月限は139.90の高値を付けて3月限終値139.42を越え、限月交代翌日にして限月間の窓を埋めるという快挙を成し遂げたのでありましたw
東証15時の終値は139.20、板スカスカのEV終値は139.27。LIFFE清算値は139.65ェ…。

BBが毎営業日16時頃に発表する引値(BB国債価格)は通常通り発表されました。先物を基準にカーブを引いた、それなりに納得いくプライスでした。個別ではアレな部分ももちろんあるんだけど…。

ちなみに、吹き値で現物の売りをぶつけた逞しい投資家がいたそうですが、Bidした逞しいディーラーに敬意を表しますよ。自分に値段出せっていわれても出来たかどうか…いや、やらなかっただろうな…。


尚、日銀は「次回金融政策決定会合の日程について」というリリースを発表、3/14-15の2日間にわたって開催予定だった金融政策決定会合を14日開催同日終了と変更しています。
また財務省は「国庫短期証券(第178回)の入札予定の変更」を発表し、TDB1yの入札日を3/14から3/15に変更しています。

さて来週はどうなるのか…。

2011年3月1日火曜日

公債特例法案がアレな件について

公債特例法ってなんぞ?という話はWikipedia先生にお任せするとして。
要するに国の赤字を国債発行による借金でまかなうには別途法律を作らにゃならんわけです。こうやって発行されるのが俗にいう赤字国債。

「国の借金何百兆円!」なんて騒がれるぐらい借金にまみれていながらにして更に借金を重ねなければならない日本なわけだけど、そのための公債特例法の法案が通らないんじゃないかとわたわたしている今日この頃なわけです。このあたりを巡る政治周りの話については、call_me_nots君のエントリ「公債特例法案と暫定予算」が秀逸ですので一読推奨。

で、「赤字国債が発行できなきゃ国庫短期証券を発行すればいいじゃない」なんて意見も出てるわけですな。

国庫短期証券というのは割引方式で発行される期間1年未満の国債。英語表記はtreasury discount bills。TDBなんて略して呼んでます。毎月だいたい27兆円とか発行されてます。たぶん。

こいつを赤字国債発行できない分バカスカ発行して短期のファイナンスを回していけばまぁなんとかなるんじゃないか的な議論。気持ちはわからんではないですがどんなことが起きるか妄想してみる。

発行できない赤字国債の規模にもよるだろうけど、TDBで回すとなればこいつの需給は悪化します。投資家さんはお腹いっぱい買ってたとして、残りの玉は業者が在庫として抱えることになります。オペに入れてもみんな突っ込んでくるから思うようにカネが取れない。GCにもボコボコ出てくる。

つまり、大量発行されたTDBを保有するための資金の争奪戦が始まり、資金調達コストが上昇してくわけですな。

資金調達コストが上昇すれば保有債券にもより高い利回りが求められるわけでして、TDBの利回り水準も必然的に上昇していくでしょうねぇ。利上げもなかろうに短期金利の上昇スパイラル。もしかすると入札が未達なんてことになっちゃうかも知れんよ。短期ゾーンがいつまでもこのクソ低金利なんて夢でしたねあばばばばーなんてことに…((( ;゚Д゚)))

毎朝買い現先やれやれって日銀前でデモとか起こっちゃうんじゃないだろうか。

ちなみに昨年後半、市場機能論がどうとかこうとか言われ始めたのを皮切りに、GCのレポレートが上昇、その後の債券プチバブル崩壊ならびにゲロゲロマーライオン相場突入で全員ブン投げ全力投球になったのは記憶に新しいところ。足元の金利が不安定になれば当然ながらより長いゾーンにも悪影響を与えます。

悪夢が甦りますね。えぇ、私もロングでしたからw


以上、TDBでファイナンスしちゃいなYO論を聞いて3秒で思いついた世界でした。
書きなぐりすぎてこの記事のほうがアレだわな。

2011年2月1日火曜日

リオープンと大人の事情

「格下げ?何それ、おいしいの?」

とでも言わんばかりにJGBは反発。格下げでJGBショートよりは買い向かうほうがよっぽど儲かるのはこの市場の経験則でもありまして、足下の反発はむしろ格下げがキッカケであった感すらありますがいつまでも無視するわけにゃーいかんというのはまた今度書くとして。

本日行われましたJGB10Yの入札、結局は#312のリオープン発行となりました。#312はこれで12月、1月、2月と3度にわたり発行されたことになるわけです。こういうのをトリプルイシューとか3発とか言います。

前回はリオープンを狙う向きもあるというところで終わっていましたね。

今回は格下げの反動やエジプト情勢の混乱により、JGBは売られず1.2%クーポンのリオープンとなったわけですが、場合によってはリオープンしてもらっては困るという参加者もいるのです。

通常、JGBの入札の少し前からは、その対象となる年限やその周辺の現物、あるいは先物が売られることが多いです。入札を前に投資家が買いを手控えるという投資行動もありますが、証券会社等(市場では業者と言われます)が売りを入れることが多いのです。

投資家が買いたいと思えるぐらい安くしておく、という意味と、一定の落札義務を負うプライマリーディーラー等が落札するために先にショートしておく、という意味の2つが理由。後者は、株で言えば、増資が発表された銘柄をショートしておいて増資分でカバーするようなイメージです(今は出来ないんだっけ?)。

現物をショートするとなれば当然、誰かからモノを借りてきて空売りすることになりますね。(この貸借取引のことをレポと言いますが、それはまた今度)。

入札を前に多くの業者が現物をショートしようとすれば、当然のことながら、その現物を皆が借りようとします。するとその現物の品貸料(以下:レポ料)が高騰します。それがわかっているから、ショートの対象となる現物(今回では既に発行された#312)の保有者は、いわば現物の貸し渋りを行うわけです。

どこかがガメたんだかわかりませんが、#312も1月の時点でリオープンされ通常の倍の額が発行されているにも関わらず、レポ料が高くなっていました。今日の入札で同じ#312が追加発行されショートカバーすることができれば、この債券の需給が緩むことにつながります。レポ料の高止まりもこれにより解消するわけです。

ところがですよ

もしJGBが売り込まれて#312の追加発行ではなく#313の新規発行となっていたら、#312の需給逼迫は目先解消されることなく、ショートしてる業者としては、高いレポ料を払って借り続けるかショートカバーで踏みにいくかを選択せざるを得ないわけです。

既発の銘柄のレポ料が高騰している場合、ショートしている業者としてはリオープンしてもらった方が楽になれるわけです。高いレポ料を払い続けることがなくなりますからね。たとえ、投資家ウケが期待されるクーポンアップの新回号が見込めそうでも、ヘッジうりどころか逆に買い支えることでリオープンを阻止するわけです。

これが前回の結びに書いた大人の事情ですw

まぁ今回の入札に関しては、リオープンしたところで1.25レベルの買いニーズはかなりありましたので、入札直前のレベルから投げても1毛下には買いが控えていたわけで、下値不安は乏しかったかと思います。むしろ1.20までの伸びしろが出来た分、いい位置での入札だったのではないかな。

なんて話を今日夕方にもある方と話しておりました。

あ、ちなみにTwitterにも書いたことですけど、今日の入札を「低調」と評する情報ベンダーさんの記事を多く見ましたが、んなこたぁないと思います。やや弱めな気もしますが入札のレベル感も悪くはないですし、入札結果発表後には行った仕掛け的な先物売りも数分後には押し目買いで全部踏まされてましたし。

あんな程度の動きで「財政に不安が〜〜」なんて記事が出たら、我々円債ディーラーは「まぁせいぜい言うとけ」ぐらいにしか思いません。ぷぷぷ。

2011年1月27日木曜日

日本のソブリン格付けから10年債入札を妄想する

S&P:日本のソブリン格付けを「AA-」に格下げ(Bloomberg)

夕方の一服から戻ってきたらやたら現物が売られる約定音が端末から響き、先物はホイホイ20銭ほど売られ139.70→139.50近辺へ。
USD/JPYは82円台前半から83円台へ1円程度の円安。
ふと見ればBloombergの端末に冒頭のようなヘッドラインが赤々と表示されていたわけです。

思わず出た一言は「押し目買いチャーンス」w

日本のソブリン格付けだの財政悪化だので海外のHF等がJGB売りを仕掛けることは前からありまして、ことごとく返り討ちにされてきたわけです。
裏を返せば、買い方に絶好の買い場を提供してきたわけですよ。

で、上記ニュースが流れた後、10Y#312は1.25が出合っていたような。
2/1に10年債の入札を控えて微妙なレベルです。債券市場の参加者としてはこんなことを思います。

(来週の入札、もしかしてリオープンしないじゃねーの?)

リオープンとは、毎月行われるJGBの入札において、既に発行されている銘柄を再度発行することです。銘柄統合とも言います。
超乱暴にいうたら公募増資みたいなもんですw

直近発行のJGB10Yである#312は1.2%クーポンの2020/12/20償還。
来週の入札で発行される10年債も2020/12/20という償還日は決まっています。
まだクーポンがいくらになるかは決まっていません。

新発債のクーポンは入札日のマーケット動向によって決定され、10:30に発表されます。

例えば2/1の前場で#312が1.24あたりで取引されていれば(円債は主に単価ではなく利回りで取引されます)、新発債のクーポンは1.2%となり、結果的に、クーポンも償還も全く同じですから#312が再度発行されることになるわけですよ。



海外勢あたりが現物なり先物なりSWAPなりでJGBを売り込んで、2/1の前場で#312が1.27あたりで取引されたとしましょう。すると新発債は1.3%クーポンになる可能性が高い。となれば償還が同じでもクーポンが違うので、#312リオープンではなく新回号の#313となるわけですね。


国債入札日の数日前から当日前場にかけては、新発債のクーポンを巡る思惑による商いが行われます。それは時としてかなり熾烈なものになります。新回号狙いで下値を叩いてでも売る人がいたり、リオープン狙いで下値を守る人がいたり。

なぜリオープン狙いの人が出てくるのか?

ここが今回のキモの部分ではあるんですが、それは来週の入札の後に書きましょう。このエントリももうだいぶ長くなってきたし、色々と大人の事情があるのでご理解くださいw

2011年1月25日火曜日

債券ディーラーの一日

とある証券会社の債券トレーディングフロアの光景


【7:00】
ぱらぱらと出社してきて、各自、前日の海外市況やその日の予定をチェック。
一番に見るのはやはり米国債の値動き。もちろん株、為替、商品や、指標、要人発言といった材料も確認。
ソースは主にQuick、Bloomberg、Reutersといった情報端末。

【8:40】
現物債の売買開始。
各ブローカーの取引用端末の画面に気配が出始める。とはいえ、先物の売買が始まるまではほとんど商いはなく、冷やかし程度の気配が大半であることがほとんど。

【9:00】
東証で日本国債先物の売買開始。実質的な"寄付"。
先物の値段を見ながら、現物の気配が詰まり、出合い始める。投資家からも、相場案内やオーダーの電話が入ってくる。

セールス「312、10億買いたい!」
ディーラー「…1毛甘」
セールス「今1毛甘ですね…はい、キメですね。じゃあ10億1甘買いキメ!」

みたいなやりとりが2時間ほど続く。

【11:00】
前場の先物の売買終了。続いて11:05に現物売買終了。ディーラーは実現損益や評価損益を集計して昼休みへ。

【12:30】
先物の売買再開。先立って12:25からは現物の売買が再開される。
昼休みの間に材料がでた場合など、先物の後場寄り前に現物が先に動き出すこともある。ディーラーにとっては指値消し忘れ注意の時間帯であるw
ここからまた2時間半、前場は様子を見ていた向きも巻き込んでの売買の時間となる。

【15:00】
先物の日中売買終了。でも現物売買はここでは終わらず、日によっては最も商いが膨らむ。いわゆる"引値合戦"はこのタイミングで行われる。ある程度落ち着いたらその日のP/Lを集計。個人的にはこのあたりでレポ取引もする。

【15:30】
先物イブニングセッション開始。
基本的には日中の売買に比べて流動性はガタ落ち。その日のポジションの最終調整の意味合いが大きい。
ちなみに、イブニングの約定は"翌日約定分"として扱われる。

【16:00頃】
BB国債価格、俗にいう"引値"が発表される。
債券は取引所取引ではないのでいわゆる終値というものが存在しない。そこで債券ブローカー最大手のBBが発表する引値でポジションの時価評価などを行う。投信の基準価額算出にも使われてると聞いたことがあるようなないような…。
ちなみに新発債の引値は翌日の日経新聞マーケット面に出ている。

【17:00】
ここでようやく現物の後場の売買が終了。
事務作業したり、知り合いのディーラーと電話で世間話したり、レポート読んだり、といった時間帯となる。とかやってる間に現物のイブニングセッションが始まったりする。

【18:00】
先物イブニングセッション終了。続いて18:05に現物の売買が終了。
イブニングの板が薄いところでヨーロッパ組から仕掛けが入ったり、消し忘れた指値が放置されていたり、動かなくても意外と気が抜けない。でも私はだいたいTwitterにいるw


とまぁこんな感じで一日過ごしてるわけです。
が、これでけではさっぱり意味わからんボケカス○ねと言われそうなのは理解しています。

いわばこのエントリーは目次みたいなもんで、ディテールについては個別にエントリーを立てて解説していこうかと思っとります。
…ニーズあるのか??(´∀`;

2011年1月23日日曜日

とりあえず始めてみます

マーケットに関する俺様メモを垂れ流していこうかと。
備忘録、頭の整理、ついでに勉強。
そんな使い方になるかと思います。

あまり表に出てこない債券・金利市場を中心にマニアックなブログになると思いますので、まぁ適当にお付き合いください。
私自身も頑張って書く気はさらさらありませんのでね(´∀`)